「問いの力」とは? 月曜日が楽しい職場にしよう!

 ブログの題名にある「問いの力」って何だろう?と思った方のため、以下に簡単に説明します。詳しく知りたい方は、岸良裕司(Goldratt Japan CEO)さんが書いたいま、あなたに必要なのは答えじゃない。問いの力だ。をお読み下さい。
 「問いの力」というのは、「問い」を立てる力のことです。「正解」のある学校とは違い、社会では何が「正解」なのかはやってみないと分かりません。「正解」のない世の中では、自分で「問い」を立てて、「答え」を出すことが当たり前のように要求されます。「誤った問い」からは、「良い答え」は見つかりません

 最初に質問します。「皆さん、忙しいのは好きですか?
 忙しいのが好きという人は余り居ないと思いますが、「忙しいのは嫌い!」という人は必ず読んでください!

1 問題を正確に定義する

(1)バッドマルチタスクの弊害と対処方法

 バッドマルチタスクになると生産性が極端に落ちるので(信じられないかもしれませんが、一つのことに集中している時の10分の1以下です)、マルチタスクにならないように、優先順位を明確にして、フルキット(万全の準備)できたものから、一つずつ集中して処理した方がはるかに生産性も上がり、仕事が楽になります。

(2)マルチタスクにならないためには

 でも、皆さんは、好きでマルチタスクになっているわけではないですよね?マルチタスクになるというのは、問題がそれだけ多く、それら全てに対応している状態ということです。
 そうならないためには、「問題を正確に定義して下さい。それができるようになると、対応しなければいけない問題が減り、コアの問題に集中して対応すれば、大きな成果にも繋がるので、悪い意味での問題も起こらなくなり、更に前向きな問題(良い意味での問題)にチャレンジできるようになります。
 皆さんの中には、日々の問題に忙しく対応していて、それなりに達成感もあるので、それで満足してしまっている人が大勢いるかもしれませんが、そうしている限りは、問題は増えるばかりで、決して良い方向(好循環)には向かって行きません

(3)問題を正確に定義できれば、問題は半分解決したも同じだ

 「問題を正確に定義できれば、問題は半分解決したも同じだ」とエリヤフ・ゴールドラット博士(イスラエルの物理学者)は言っています。逆に、問題を正確に定義できていなければ、問題は解決から遠ざかって行きます。たまたま解決したり、解決したように見えても、新たな問題を引き起こしたりして、それに対処しなければならないという悪循環に陥ります。正に、皆さんの多くは、今そういった状態にあるのかもしれません。
 「問題とは現状と目標のギャップ」のことです。多くの人は、「現状」そのものを「問題」と捉えてしまい、直ぐにそれに対する解決策を考えてしまいます。その結果、全ての「現状」に対する解決策を考えることになり、それがバッドマルチタスクになります。特に頭の良い人は、直観で直ぐに解決策が思い浮かぶので、その傾向が強いように思えます。
 その結果、沢山の解決策(対処療法である場合が多い)を実行し、やった気分になりますが、「現状」を解決でき、目先の「目標」を達成できたように思えても、実は「大きな目標(ザ・ゴール)」を全く達成できていないことが殆どです。
 また、対処療法には副作用が付きものです。強力な対処療法ほど大きな副作用を生み、その副作用が新たな問題を生み、それに対処することとなります。そうやって、皆さんの仕事は増えていき、人を増やして対応しようとしますが、その人が更に問題を見つけて、その解決策が新たな問題を生む。問題を解決すればするほど、人を増員すればするほど問題が増える!そんな悪循環が皆さんの仕事を忙しくして行き、達成感を乏しくして、疲労感が増すばかりです。
 そうならないためにも、是非「問題を正確に定義する」習慣を身に付けてください。

(4)問題を正確に定義する

 問題を正確に定義する手順は以下のとおりです。

ステップ1:皆で、「現状」の「望ましくない現象(UDE:UnDesirable Effect)」を洗い出し、合意する。

注:合意するまで、次のステップに進まないでください

ステップ2:現状のUDEに対して、望ましい現象(DE:Desirable Effect)が何なのか、皆で考え合意する。

 このDEが「目標(ザ・ゴール)」になります。
注:DEが手段になっていないか注意して下さい。
 例えば、企業の場合、UDE(コストダウンが進まない)の反対は「コストダウンが進む」と考えがちですが、これは手段なので、実際には「利益が増え続ける」がDEとなります。
 
 現状(UDE)と目標(DE)が明確になったので、そのギャップが「問題」と定義されます。次に、大切なのは、この問題全てに対応しようとしないことです。そうしてしまうとバッドマルチタスクになってしまい、問題解決から遠ざかることになります。
 ところで、バッドマルチタスクの対処法は、何だったでしょうか?「優先順位を明確にして、優先順位の高いものから取り掛かる」です。従って、次のステップは以下のとおりです。

ステップ3:UDEの中で一番解決したいもの(優先順位の高いもの)を選んで、それに対する目標(DE)を達成する解決策を考える。

 殆どの場合、この解決策を実行することで、他のUDEも同時に解決できる場合が多いです。この解決策では解決できないUDEがあった場合のみ、そのUDEに対する目標(DE)を達成する解決策を考え、解決策を補強します。こうすることで、全てのUDEに対応する必要が無くなると同時に、一番解決すべき重要なUDE(コアの問題)の解決に「集中」できることになります。このコアの問題を解決しない限り、UDEが無くなることはありません
 でも、コアな問題は簡単には解決できません。簡単に解決できるくらいなら、もう誰かがとっくに実行していて、問題は解決しているはずです。コアな問題は難易度が高く、これまで皆さんが「この問題は解決できない」と言って避けてきた問題です。でも、この問題を解決しない限り、悪循環を断ち切ることはできません
 皆さんで、このステップに取り組んでください。あれもこれも対応しなくても良いので、余力が生まれているはずです。皆で、より優先順位の高い問題(コアの問題)に取り組むことで、大きな成果にも繋がって、皆さんの仕事も楽になって行きます(好循環

2 相手の立場に立って考える

 次に大切なのは「相手の立場に立って考える」です。皆さんは、問題を解決しようとする際、相手の立場に立って考えていますか?

(1)まず相手のWINを考えて、その中で自分のWINを考える

 解決策を考えるに当たって、「まず相手のWINを考えて、その中で自分のWINを考えると博士は言っています。
 解決策が、相手の問題(現状と目標のギャップ)を解決しないのに、相手はそれを喜んで受け入れたりするでしょうか?仮に、強制的に受け入れさせたとして、良い結果を生むでしょうか?これまでの皆さんの解決策は、相手の立場に立って考えられているのでしょうか?
 相手の立場に立って考えているつもりかもしれませんが、解決策を相手のUDEに無理やり当てはめていることは無いですか?相手の立場に立って、解決策を考える手順(ステップ)は、最初のお話(1のこと)が基本になりますが、以下のとおりです。

(2)解決策を考える手順

ステップ0:ステークホルダーを定義する。誰のために問題を解決したいのか?皆でステークホルダーの範囲を決める。

注:余り広範囲に設定すると、自分の所掌を超えて、自分たちでは解決できない!という結論になって、解決策から遠ざかるので、ステークホルダーの定義は重要です。自分が影響を及ぼせる範囲で定義して下さい。

ステップ1:UDEを考える際に、自分だけではなく、ステークホルダーのUDEも考える。

注:ステークホルダーが一堂に集まってワークショップをすると効率的ですが、なかなかそういうわけにはいかないので、そうできない場合は、ステークホルダーの立場になって、相手のUDEを考えてください

ステップ2:自分とステークホルダーのUDEに対して、DEが何なのか考える。

ステップ3:ステークホルダーのUDEの中で一番解決すべきもの(優先順位の高いもの)を選んで、それに対するDEを達成する解決策を考える。

注:その際、その解決策が、同時に自分のUDEをDEに変えられるようなものを考える必要があります。
 
 この辺の話は「ザ・ゴール2 コミック版」(ダイヤモンド社)を読んでもらえばよく分かると思います。この本では、売却したい3つの会社の企業価値を高めるために、まず相手(会社の顧客)の立場で解決策を考えて、合わせて自分(会社)の問題も解決できるようにすることで企業価値を高めていることが分かります。

 以上のとおりですが、このブログを読んで終わりにするのではなく、簡単なものからで良いので実際にやってみて下さい。このステップのように考えられるようになったら、仕事(人生も)は楽になって、組織のパフォーマンスも向上し、結果として、会社や皆さんの目標である「ザ・ゴール」を最短距離で達成することができるようになり、そして、月曜日が楽しい職場になります
 皆さんも月曜日が楽しい職場!」になるように、「問いの力」を学んで、是非実行してください。

 皆さんのお悩み(問題)について、問題を正確に定義して、コアの問題を解決したいという方は、お気軽に当事務所にお問い合わせください。

行政書士内藤正雄事務所