令和6年能登半島地震により、店舗や事務所等が損壊した小規模事業者及び中小企業者等の営業再開の取組を支援する補助金が公募開始されました。今回は、それについて少し解説したいと思います。詳細については、公募要領を参照してください。
参考資料(石川県HP。以下同じ):チラシ、概要・活用事例イメージ集、公募要領
【補助対象となるもの】
営業再開に必要な仮施設等の整備に係る経費が対象
〇仮設店舗用のコンテナハウスの購入
〇仮設事務所用のトレーラーハウスの導入
〇商品や資材保管用の仮倉庫の購入
〇簡易な仮作業施設の建築(自社施工の場合は材料費のみ対象)
〇キッチンカー用の車両の購入(トラックやバン等)
【補助対象とならないもの】
仮施設等の整備に当たらない修繕費や賃借料は対象外
〇既存店舗の修繕(持続化補助金やなりわい補助金を活用ください)
〇仮店舗で使用する機材の導入費(持続化補助金を活用ください)
〇仮店舗の賃借料(持続化補助金を活用ください)
〇仮店舗として活用できない一般車両の購入(営業車含む)
※ 営業再開支援補助金、持続化補助金、なりわい再建支援補助金の支援内容の違いについては、各支援制度一覧表を参照してください。
1 令和6年能登半島地震 営業再開支援補助金の概要
令和6年能登半島地震により被害を受けた石川県内に事業所を有する中小企業・小規模事業者等の営業再開の取組に要する経費の一部を補助するものです。
項 目 | 詳 細 |
補助上限額 | 300万円 ※共同申請の場合 300万円×事業者数(上限3,000万円) |
補 助 率 | 3分の2(小規模事業者)、2分の1(中小企業) |
補助対象者 | 令和6年能登半島地震の被害を受けた石川県内に事務所を有する中小企業・小規模事業者等 ※複数事業者による共同申請も可能(最大10者まで) |
要 件 | ・市町等による被害認定が「半壊以上」であること ・地元等での事業再建計画を策定すること |
補助対象経費 ※対象経費早見表 | 営業再開に必要な仮施設等の整備に係る経費 ①仮店舗用コンテナの購入、②仮作業場・仮倉庫の整備、③キッチンカー車両の購入、 ④簡易な仮施設の建築 等 ※施設等整備費が対象のため、修繕費や賃借料等は対象外 ※着手済の経費についても、災害発生日(R6.1.1)まで遡及適用が可能 |
スケジュール | 申請受付開始 :令和6年6月21日(金) 1次受付締切 :令和6年7月19日(金) 2次受付締切 :令和6年8月23日(金) 3次受付締切 :令和6年9月27日(金) 4次受付締切 :令和6年11月1日(金) 5次受付締切 :令和6年12月13日(金) 事業完了期間 :令和7年1月31日(金)(5次受付分は令和7年2月12日(水)まで) |
交付決定 | 1次締切分: 26件、 52,266千円 2時締切分: 59件、123,521千円 |
2 営業再開支援補助金の留意事項
⑴よくある誤解
給付金ではありませんので、採択審査(非公開)があり、不採択になる場合があります。また、「後払い」が原則であり、採択決定後に直ぐに補助金が支払われるわけではありません(自己資金が必要)。
⑵補助事業実施期限までに取組を開始すること
補助対象となる経費は、補助事業期間中に「営業再開に向けた取組」を実施したことに要する費用の支出に限られます。実際の事業取組が補助対象期間外であれば、当該経費は補助対象外になります。つまり、補助事業実施期間中(令和7年1月31日まで(5次受付分は令和7年2月12日まで))に実際に使用し、補助事業計画に記載した取組をしたという実績報告が必要です。
⑶実績報告書の提出が必要
補助金は、「採択されたらそれで終わり」ではありません。むしろ、採択決定後の事務作業の方が煩雑であることが多いです。具体的には、以下の書類を作成・提出する必要があります。
・実績報告書
・支出ごとの最終見積書、発注書又は契約書、納品書、請求書、振込受領書等
・取組事業の成果物見本や写真等
・請求書
・振込先口座の通帳のコピー
なお、上記関係書類の保存義務(5年間。令和12年3月31日まで)があります。
⑷財産処分の制限がある
取得価格等が1件あたり50万円(税抜)以上の取得財産については、補助事業終了後、一定期間(取得から5年または本復旧までの期間のいずれか短い期間)において、取得財産の処分を行う場合、補助金事務局の承認を受ける必要があります。
なお、取得財産を処分することにより収入があり、またはあると見込まれるときは、その収入の全部もしくは一部に相当する金額を納付する必要がある場合があります(補助金額を全額返納するのではないことに注意。)
3 補助対象者
補助対象者は、以下の⑴から⑶の要件をいずれも満たす事業者です。
⑴令和6年能登半島地震により、一定以上の被害(被災証明・罹災証明等で「半壊以上」の判定など)を受けた石川県内に事務所を有する事業者であること(単独または複数事業者)
⑵中小企業者(小規模事業者を含む)であること
詳しくは、公募要領を参照してください。
⑶本事業の応募の前提として、事業再建計画(本事業による営業再開及び将来的な本格復旧に向けた計画)を策定していること
※ 本事業による営業再開に向けた計画(仮復旧)及びその後の本格的な事業再建に向けた計画(本復旧)が一体となった、事業再建計画を策定すること。
参考:計画内容のイメージ(飲食業の場合)
仮復旧計画:当該補助金で整備する仮店舗(コンテナを購入)で営業を再開し、ネット広告等での販売促進により、売上を確保。
本復旧計画:地震前と、地震後の仮営業での売れ行きや顧客等の違いを参考に、復旧店舗の機材やレイアウトを検討し、2 年後、なりわい再建支援補助金で本復旧を図る。
※「機材やレイアウトを検討」とあるので、原状復帰に留まらず新分野事業に該当。
4 補助対象経費
⑴補助対象経費
次の①から③の条件を全て満たす必要がある。但し、②の特例として、令和6年1月1日の能登半島地震により被災した日以降に補助事業を実施し、発生した経費を遡って補助対象経費として認められる。
なお、本事業は早期の営業再開を図るものであるため、通常求められる2社以上の見積書の提出は求められていない。
① 使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
② 交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費
③ 証拠書類等によって支払金額が確認出来る経費
⑵補助対象経費科目
ア 施設等整備費(仮店舗等のコンテナ等、仮作業場等の簡易な建築物等、仮倉庫)
新たに施設(コンテナや倉庫等の小規模な建物含む)を整備する場合や、既存施設を増築・増床する場合が補助対象であり、既存施設等の修繕は補助対象外です。
また、仮店舗内の内装工事は原則対象外ですが、施設整備と一体のもの(施設に付随する設備・装飾の施行等)であれば、内装工事部分も補助対象となります。
なお、内装工事費は持続化補助金の対象にもなるので、全体事業費等を加味し、本補助金と他補助金の使い分けをご検討してください。
イ 車両購入費(仮店舗等のキッチンカー等)
キッチンカーや移動販売車等の仮店舗として活用可能な車両の購入のみが対象となる。車両購入費のみが対象であり、内装・改造工事は補助対象となりません。
なお、内装・改装工事に係る費用は持続化補助金を活用できます。
※ 通常、キッチンカー(新車)の場合、見積の内訳として、車両購入費と内装工事費に分けられるので、車両購入費のみが補助対象となりますが、中古車の場合、一式の価格に含まれるため、全体が補助対象となると思われます(申請する前に補助金事務局に確認してください)。
ウ 機械装置費(営業再開に必要なPCや複写機等)
営業再開に必要不可欠であり、かつ、汎用性を理由に持続化補助金で対象外となっている機械装置の一部が補助対象となります。
機械装置費のみによる申請は出来ませんので、必ず、他の経費(施設等整備費、車両購入費)と一緒に申請してください。詳しくは、公募要領を確認してください。
5 事前準備から事業終了までの流れ
⑴事前準備
被災証明・罹災証明等(半壊以上)の準備
事業再建計画の作成
交付申請書等の提出書類の作成・準備 ※ 本事務所にお任せください!
⑵申請受付開始から交付決定
申請受付開始(令和6年6月21日)
5次受付締切(最終)(令和6年12月13日)
採択審査
採択者決定
⑶交付決定から補助事業実施
交付申請・決定
補助事業の開始完了(令和7年1月31日まで)(5次受付分は令和7年2月12日まで)
実績報告書の提出 ※ 本事務所にお任せください!
書類検査(必要に応じて現地調査等)
補助金の額の確定 ※ 実績によっては、交付決定金額よりも減額される場合あり。
補助金の支払い
6 事業再建計画の作成
審査において、要件を満たさない場合は、失格となります。
事業再建計画の作成は、事業が復興するかどうか、成否を握るものであり、自社の問題(現状と目標のギャップ)を正確に定義した上で、問題を解決できるように(成果が出るように)事業再建計画を立てることが重要です。(参考ブログ:「問いの力」とは?)
「営業再開支援補助金」について、不明な点等がございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。
「行政書士内藤正雄事務所」