測定なくして、管理なし

 私の名刺には、「測定なくして、管理なし」という言葉が書かれています。ただし、期待に反して、名刺交換する際に「どういう意味ですか?」と質問されることは稀で、説明する機会が無いので、今日はこの言葉の意味について少し記してみたいと思います。
 元々は、私にIE(Industrial Engineering:生産工学)を教えてくれたコンサルタントの名刺に書かれていたもので、科学的管理法の父と言われたフレデリック・W・テイラー(1986年~1915年)の言葉とのことでした。それ以来、二十年以上になりますが、当時の誓いを忘れないように、今でもこの言葉を名刺に刻んでいます
 この言葉の出典は、著書の「科学的管理法」に書かれているものとばかり思っていましたが、私の持っている本「新訳 科学的管理法 マネジメントの原点」(ダイヤモンド社)には「測定なくして、管理なし」という言葉の引用はなく、ネットで検索しましたが、具体的に引用された著書や文献のようなものは見つかりませんでした。しかし、テイラーの管理哲学を要約するものとして一般に使用されているみたいです。

1 マネジメントの原則

⑴マネジメント(経営)とは?

 (株)日本能率協会コンサルティングが著した「工場マネジャー実務ハンドブック」には、「測定なくして管理なく、管理なくして適正なマネジメント活動は行えないとテイラーは述べている(ここではControlを管理と訳している)と書かれています。
 これは「Management(経営)=Measurement(測定)+Control(管理)」、すなわちマネジメントの原則は、適正な測定と適切な管理(コントロール)によってなされるということを意味しており、マネジメントするということは、「現在の状態」を「目的とする状態」に変換するということだとしています。
問題とは、現状と目標のギャップである」「現状と目標のギャップを埋めるのが解決策である」と考えると(詳しくは、『「問いの力」とは? 月曜日が楽しい職場にしよう!』を参照のこと)、マネジメント(経営)というのは、現状と目標(ザ・ゴール)のギャップを埋める解決策を実行することであり、それを実行する手段として、適正な測定に基づいた管理が必要になるということになります。

⑵PDCAサイクルを回す

 PDCAを管理サイクルあるいはマネジメントサイクルといい、管理の原則といいますが、このサイクルを繰り返すということは、計画(PLAN)→実行(DO)→確認(CHECK)→修正(ACTION)を繰り返すということですが、これは望ましい姿(目標)を描き、計画を実行し、それがうまくいっているかどうかを測定し、必要ならば修正する、という行動を表しています。日常活動では、この測定と管理(コントロール)によって、PDCAサイクルを回すことに意味があります。

⑶人間性を念頭に測定すること

 この測定と管理(コントロール)ですが、これにもいろいろなレベルがあります。測定の仕方は、時計で測るというやり方もあれば基準との比較というやり方もあるし、計画との比較というやり方もあります。ただし、よいマネジメントのためには、適正で公平な普遍的なもので測定する必要があります。適正とは管理目的にあった正確性を持っているということであり、コントロールにもいろいろなやり方があります。単に睨みを利かせるというものもあれば、まるでボクシングのセコンドのように都度アドバイスする方法もあります。
 また、よいマネジメントを実践するためには、いくつか考慮すべき点があり、管理は細かければ細かいほど良いというもののではありません。実際にコントロールする程度(範囲あるいは限界)を考慮することが必要です。もちろん経済性を考慮することはいうまでもないが、人間性の限界もあります。本来、人は統制を好まないというだけではなく、ある特定のことだけで評価されることに抵抗感を強く持つものです。したがって、マネジメントする際は、人間性を常に念頭に置く必要があります。

⑷評価指標の設定には留意しましょう!

 測定し、管理するためには、測定したものを評価する基準(評価指標)が必要です。そして、評価指標が決まると、目標が設定されることになります。例えば、評価指標が売上だとすると、個人別の売上目標が設定されて管理されることになり、その達成度で個人が評価されることとなります。この場合、売上第一の評価だと売上を追求する余り、コンプライアンス違反を起こしてしまうかもしれません。
 また、個々の評価指標(生産性の向上)の達成が、全体の評価指標(利益)を悪化させることもあります。
 「あなたが私をどう評価するか教えてくれたら、どう私が行動するか教えましょう」というゴールドラット博士の有名な言葉がありますが、これは評価するものによって人の行動が変わることを意味しています。
 評価指標は、「測定なくして、管理なし」を実行する上で必要不可欠なものですが、設定する際は、全体の目標(ザ・ゴール)を踏まえ、個々の評価指標の達成が個別最適に陥ることなく、全体の目標の達成(全体最適)に繋がるように、よく考えて設定することが重要です。

2 ブレークスルーのチャンス(宝の山かも?)

 個々の目標(生産性向上など)を達成しているのに、なぜか全体の目標(利益増)は達成できていない、または期待されるほどには達成できていないということはよくあることです。それは評価指標が間違っているか、評価の仕方が間違っているかのどちらかです。
 でも、皆が使っていて、長い間、既成概念になっているので、自分たちではなかなかそれが気が付きません。その間違いに気付くことさえできれば大きなブレークスルーのチャンスです。もしかしたら、それは宝の山かもしれません!

 上記について思い当たることがございましたら、お気軽に当事務所にお問い合わせください。ブレークスルーのチャンスかもしれません!

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