令和6年能登半島地震 石川県なりわい再建支援補助金

 令和6年能登半島地震により被害を受けた中小企業・小規模事業者等(以下、「中小企業等」という。)を支援する補助金の公募が開始されました。募集は複数年・継続して行われますので、申請に当たっては、なりわい補助金の基本の考え方注意点財産処分を踏まえ、焦らず、じっくり検討してください。
 本ブログは、被災された事業者の事業継続や雇用維持のための各種支援施策に関する説明会「事業者支援施策説明会」で配布・説明された資料に基づいて記述したものを新たに公表された公募資料(概要)等を踏まえて加筆・修正したものです。詳細については、「令和6年能登半島地震に係る石川県なりわい再建支援補助金」(石川県HP)の公募資料等を確認してください。
 なお、特例として、令和6年能登半島地震による災害発生以降で、交付決定の前に行われた事業に要する経費についても適正と認められる場合には補助金の対象となります(遡及適用)。

1 なりわい再建支援補助金の概要

 令和6年能登半島地震により被害を受けた被災区域4県(石川県、富山県、新潟県、福井県)の中小企業・小規模事業者等が、倒壊した施設の建て替えをしたい、壊れた施設・設備の修繕をしたい、という場合に支援を受けることが可能です。
 石川県が作成する「復興事業計画」に基づき、中小企業等が施設復旧等に要する経費の一部を国と県が補助することにより、被災地域の復旧及び復興を促進することを目的としています。
 これを読むと、「復興事業計画」が事前に提示されるのか?と思いましたが、公募当初にはそのようなものはなく、申請者からの補助金交付申請を県がとりまとめ、それを県の「復興事業計画」として策定・提出するという流れになっており、交付決定(第1回:令和6年3月27日、第2回:令和6年5月10日)に併せて「復興事業計画(なりわい再建支援事業)」が公表されました。この中で、復興を効果的に進めるため、地域産業への支援等5つの分野を重点項目として定め、復興に向けて必要となる類型(地域資源産業型、②商店街型、③経済・雇用貢献型、④地域生活・産業基盤型、⑤サプライチェーン型)として設定しています。従って、事業計画の作成に当たっては、この5つの分野のいずれにか属していることが必要となります。
 また、この補助金は、中小企業者等が自ら保有、資産計上している、事業の用に供する施設・設備の原状回復が原則となっているので、補助事業計画書を作成するに当たり、今回の地震により損壊又は継続して使用することが困難になった施設や設備を原状回復することが復興事業計画の5つの分野のいずれかに合致するように作成する必要があります。
 ただし、特例として、要件を満たせば、新分野需要開拓等を見据えた新たな取組(新分野事業)による施設等の整備費用についても補助対象とできる(但し、原状回復に要する経費が上限)ので、単に原状回復を目指すのではなく、「原状回復+新分野事業」という視点で、事業計画を立てることが望ましいと言えます。

【新分野事業の例】
 新商品製造ラインへの転換、複数の施設・設備の統廃合等による生産効率向上、
 異業種への展開、従業員確保のための宿舎整備 等

 項  目                      詳  細
補助金額(上限)石川県内の事業者
⇒ 15億円、一部5億円までの定額補助
・富山県・福井県・新潟県内の事業者
⇒  3億円、一部1億円までの定額補助
※ 過去数年以内の災害で被災し、復興途上であるなど、一定の要件を満たす場合(詳細は公募資料参照)
補助率中小企業者 4分の3
中堅企業及びみなし中堅企業  2分の1
大企業及びみなし大企業 補助対象とならない
※ ただし、中小企業者が事業活動を行う上で必要な施設・設備を貸与している事業者については補助対象(補助率2分の1)となる。
補助対象事業者・上記のとおり。
個人事業主(農家や漁業者、開業医を含む)も補助対象となる。
・事業規模にもよるが、組合や法人等も補助対象となる。
補助対象経費中小企業者等が所有し(資産計上されているもの)、事業に供する施設又は設備であって、令和6年能登半島地震による災害のため損壊又は継続して使用することが困難となったもののうち、県内の施設及び設備の復旧・整備に要する経費が対象
・なお、令和6年能登半島地震による災害発生以降で、交付決定の前に行われた事業に要する経費についても適正と認められる場合には補助対象となる(遡及適用
⑴原状回復について
原状回復とは、修繕が可能な場合は原則、従前施設・設備の修繕が補助対象
修繕が困難である場合建て替えや入替えが原状回復(規模や機能、性能が同等以下でなければならない)として容認。なお、現行の建築基準法等の法令基準(耐震基準等)を満たすための最低限の構造強化等も原状回復として容認
・また、半壊などの修繕が可能な場合でも修繕(原状回復に要する費用を上限として建替や入替が可能
⑵原状回復を超える改良(補強)、機能付加・拡充について
原状回復に要する費用を上限として、原状回復を超える防災・減災に資するような改良(補強)や性能向上に資するような機能付加・拡充を図ることも可能
⑶液状化対策(地盤・土壌改良)や解体費用、がれき撤去の取扱いについて
・現地での施設等の復旧に必要不可欠な場合、補助対象
⑷受取保険金・共済金の取扱い
・本事業で復旧等を行う施設・設備について受取保険金・共済金がある場合、①補助対象経費の内の自己負担分に充当、②自己負担分を超える受取保険金・共済金がある場合超える部分の半額が補助金額から控除され、残りの額が補助金額となる
遡及適用申請にあたり必要となる書類・被災した施設・設備の所有証明利用証明
 被災したことが分かる写真、申請者の所有物であることを証明するもの(例:登記簿、名寄帳兼課税台帳等、償却資産台帳など)、業務上使用していたことを証明するもの(例:整備記録など)
見積書(原則、複数者の相見積を取得)
但し、早期の復旧が必要で、すでに購入していたなど、見積書がない場合は、その理由書
・復旧後の施設・設備についての同等性証明
 被災した施設、設備の性能等を証明するもの(例:建物の設計図、設備の仕様書)、民間専門業者(メーカー、販売店)による設備比較証明書など
車両を入れ替える場合における廃棄証明
 永久抹消登録、使用済自動車引取証明書など
新分野事業・従前の施設等の原状回復では事業再開や継続、売上回復が困難な事業者は、従前の施設等の復旧に代えて、原状回復に要する経費を上限として、新分野需要開拓等を見据えた新たな取組(新分野事業)による施設等の整備費用も補助対象とすることも可能
 この場合、令和6年能登半島地震前に所有していた施設・設備の原状回復に必要な経費に補助率を乗じた額が補助上限実際の工事見積書とは別に原状回復工事の見積書が必要
※ 認定経営革新等支援機関(商工会・商工会議所等の支援機関や金融機関など、国が認定している期間)よる確認書が必要
スケジュール公募期間:令和6年4月1日(月)~随時申請受付中
※募集は複数年・継続して行われるので、焦らず・じっくりご検討ください
 

2 なりわい再建事業補助金の留意点

⑴よくある誤解

①補助金には審査があり、証憑類(証拠書類)の添付が必要
 補助金は給付金ではありませんので、申請の際に提出した補助事業計画書などが審査され、申請内容に不備があれば交付決定されません
 ただし、本補助金の場合、施設・設備の復旧(原状回復)を目的とした採択・不採択のない補助金であるため、申請書に被災状況、復旧概要、対象経費等を記載さえすれば作成は可能であり、また、申請書以外には証憑類(証拠書類が必要となります。
 復旧の内容によっては、証憑類が多くなりますが、税金を財源とする補助金の執行であり、会計検査上、必要な事務手続きになりますので、証憑類(証拠書類)は必ず添付する必要があります。
②補助金は「後払い」が大原則
 「後払い」が原則であり、採択決定後に直ぐに支払われるわけではありません(自己資金が必要)。なお、本補助金の場合、事業実施期間中であっても、1回に限り、支出済みの経費について、補助金の概算払いを請求することができます
 また、「令和6年能登半島地震災害対策特別融資」や「令和6年能登半島地震特別貸付」等の特別の融資制度(金沢商工会議所HP)もありますのでご活用ください。
③「交付決定されたらそれで終わり」ではない
 補助金は、事業の流れを見て分かるとおり、補助金申請時にも多くの添付書類を準備する必要がありますが、「交付決定されたらそれで終わり」ではありません。むしろ、交付決定後の事務作業の方が煩雑であることが多いです。補助事業実績報告書(証拠書類を含む)の提出が不完全で、補助金を受け取ることができないということにならないように、苦労して交付決定されたのですから、煩雑な手続きに直面しても、事業実施の手引き」に従って、補助事業実績報告書を提出する必要があります。
 交付決定後に補助事業の流れは、以下のとおりです。
・<事業者>補助事業の実施(申請時の補助事業計画書通り、実施期限までに完了させる)
・<事業者>証拠書類(仕様書、見積書、発注書、契約書、図面等関係書類、完成届、完成検査報告書、完成写真、請求書、支払を証する書類など)の収集(実績報告書の添付資料)
<事業者→県>補助事業実績報告書の提出
<県>補助事業の完了確認検査(現地検査、書類検査)
<県>実績報告書に基づく補助金の額の確定(確定通知書の送付)
・<県→事業者>確定通知書の送付
・<事業者→県>補助金請求書の提出
・<県→事業者>補助金支払い
関係書類の保存義務(5年間であることが多い)
・補助事業終了後の定期的な状況報告

 なお、補助金の一般的な留意点について、詳しくは、参考ブログ「補助金とは? 補助金に関する基礎知識」をご参照ください。

⑵対象物の保険・共済への加入が必要なこと

 なりわい再建支援補助金を利用する事業者は、「自然災害(風水害を含む)による損害を補償する保険・共済」に今回補助を受ける施設・設備に加入する義務があります(加入したことを示す契約書、保険証書等の提出は実績報告書の提出時)。
 なお、小規模企業者にあっては、加入義務はありませんが、加入に代わる取組(BCP計画策定、事業継続力強化計画策定など)を実施する必要があります。

⑶事業継続力強化計画等の策定済み(予定)であること

 なりわい再建支援補助金の利用には、事業完了時点で事業継続力強化計画等を策定したことを確認するとあるので、事業完了までに、事業継続力強化計画書等を策定する必要があります。
 なお、中小企業強靭化法に基づく、事業継続力強化計画に限らず、石川県が定めるBCP計画や企業独自で策定するBCP計画でも可とされています。

⑷補助対象経費の留意点

①施設・設備の復旧における修繕と入替の取扱い
原状回復を原則としているので、修繕による復旧が前提です。
・ただし、修繕が困難な場合等は、建替又は入替による原状回復が認められます。この場合の原状回復とは、従前の施設・設備と比べて、規模や機能、性能が同等以下であることをいいます。なお、施設の建替や大規模修繕において、建築基準法等の耐震基準等を満たす必要がある場合には、その基準を満たす最低限の構造強化等は原状回復として認められます
・また、原状回復に要する費用を上限として、原状回復を超える防災・減災に資する改良(補強)を行うことも可能です。
・また、建替又は入替による原状回復が認められない場合(例えば「半壊」の場合)でも、修繕による原状回復費用を上限として、建替又は入替を行うことは可能です。
ⅰ 施設(建物)について
・原則、建替が補助対象と認められるには、「罹災(被災)証明書」や「建築士による証明」で「全壊」又は「大規模半壊」相当であることが必要です。
 移転(※県に必ず相談すること)は、河川の拡張工事による立ち退きや、市町村による集団移転計画、液状化に伴う建築制限、ハザードマップによる浸水想定地域以外への移転など、事業者の責めに帰さない他律的な要因や合理的な理由により、現地での復旧が困難な場合可能です(なお、移転が認められるのは、石川県内においてのみ)。
正当な理由があって被災物件の修繕費よりも建替費用が安価な場合は、「全壊」又は「大規模半壊」の判定が無い場合にも建替による原状回復が可能です。
※ 建築士等による修繕よりも建替が安価になる理由書の提出が必要です。
ⅱ 設備について
入替を行う場合には、原則、設備メーカー等により修復不能である証明が必要です。
正当な理由があって被災設備の修理よりも入替費用が安価な場合は、修理不能であることの証明がない場合でも入替による原状回復が可能です。
※ 「入替後の設備が従前設備と同等である旨の比較表」、「見積書による費用比較」のほか、「修理よりも入替が安価となる合理的な理由を専門業者が説明した書類」が必要です。

②リース物件の取扱い
 リース物件が使用者の事業継続に必要不可欠と判断される場合には補助対象とすることができますが、使用者自身が所有者ではないため、所有者であるリース事業者が補助対象事業者として補助金交付申請を行う必要があります。

③賃貸物件の取扱い
 賃貸物件は原則として補助対象となりません。ただし、被災時に中小企業者等が事業用として貸付を受けていた施設・設備で、復旧後も継続して事業の用に伏する場合には、例外的に補助対象となる。この場合も②と同様に、賃貸物件の大家(所有者)が補助対象事業者となり、補助金交付申請を行う必要があります。

④汎用性のある設備、機器の取扱い
ⅰ パソコン機器の取扱い
 補助対象とは認められないが、資産計上されており、被災前に所有していたこと及び業務用のみに用いていたことなどが証明できれば、補助対象となることがあります。
ⅱ 車両の取扱い
 資産計上されており、被災前に所有していたこと及び事業のみに用いていたこと、事業内容に適した車種であること、外形的に業務上使用されていることが明確なもの(企業名が車体に印刷されている等)については、補助対象になることがあります。
 なお、車両の復旧については、更に細かい留意点があります。

4 補助金交付申請の主な提出書類

 補助金交付申請に必要な書類の主なものは次のとおりです。
・補助金交付申請書補助事業計画書
・県税の未納がないことの証明書(県税事務所で取得)
財務諸表(直近1年分)
見積書一覧表(施設・設備それぞれ別に作成)
・施設・設備の復旧に係る見積書の写し(原則2者以上2者以上ない場合は見積書不足理由申立書
・施設・設備の位置図及び敷地内配置図
・(建替えの場合)新施設の位置図、敷地内配置図、用途、構造、面積のわかる詳細図
・設備の入替を行う場合は、修理不能であることの証明書設備比較証明書
・その他(補助金交付申請用チェックリストを参照)

5 財産処分について

 補助金の財源は、税金等の貴重な財源でまかなわれているため、補助事業で整備した施設・設備は、補助の目的に従い大切に使用する必要があります。
・補助金で整備した施設・整備は一定の期間※、補助目的(補助金を申請したときの用途)のとおり使用しなければいけません。
・本事業で復旧(取得や修繕)を行った施設や設備等の財産を別の目的で使用したり、譲渡、貸付、取壊し、破棄、担保権の設定等の処分を行う場合は、事前に知事の承認が必要です。
・これらの財産を処分する際には、原則、補助金相当分を返納する必要があります。
・補助金相当分の返納がなされれば、上述の財産の処分制限が解除され、自由に使用や処分ができます

※ 一定期間とは
 施設や設備の内容に応じて定められており、これを処分制限時間といいます。
 主な処分制限時間は以下のとおりです。なお、修繕による復旧を行った施設・設備についても、補助事業における修繕が完了した日が起点となります。
ⅰ施設(主なもの)
 ・鉄筋コンクリート造(事務所50年、店舗39年、工場38年)
 ・金属造(事務所38年、店舗34年、工場・倉庫20年)
 ・木続(事務所24年、店舗22年)
ⅱ機械・装置(主なもの)
 食料品製造業用設備10年、金属製品製造業用設備10年、道路貨物運送業用設備12年
ⅲ車両及び運搬具(主なもの)
 貨物自動車(ダンプ除く)5年

・財産処分による納付額については、必ずしも補助金額全額というわけではなく、財産処分の内容に応じて、それぞれの譲渡額や残存簿価相当額等に補助率を乗じた額となります。
・また、要件によっては、財産処分に該当しない場合(取得金額が単価50未満、一時的な転用など)や補助金相当額の納付を求めない場合(事業承継、老朽化による代替施設の整備など)もあります。
・本事業で復旧を行う施設・設備(処分制限財産)について、復旧に必要な資金調達をするために、担保権の設定を行うことは、一定の条件(復旧費用に係る自己負担分の範囲内)のもと認められます

6 事業計画の作成

 本補助金は、原状回復が原則ですが、上記のとおり、要件を満たせば、新分野事業についても補助対象とすることができるので、単に原状回復を目指すのではなく、「原状回復+新分野事業」という視点で、例えば工場であれば、これからの工場に求められるものも踏まえた事業計画を立てることが望ましいのではないかと思います。但し、原状回復が原則であることと復興事業計画の5つの分野のいずれかに該当するように補助事業計画を作成する必要があります。
 また、事業再建のための計画の作成は、将来の利益を生み出すために非常に重要なものであり、自社の問題(現状と目標のギャップ)を正確に定義した上で、問題を解決(事業が再建でき、期待通りの成果(売上・利益)を達成)するように事業計画を立てることが重要であることはいうまでもありません。(参考ブログ:「問いの力」とは?
 補助金は目標(ザ・ゴール)を達成するための手段であって、目的ではありません補助金は無事に採択され、補助事業計画の通りに完了したけど、期待した成果(利益増)には繋がっていないということでは全く意味がありません。事業計画の作成といっても色々なやり方がありますが、以下の手順で計画を作成することで、確実に目標を達成できる解決策を計画に落とし込むことが可能となります。
 1 目標(ザ・ゴール)を明確にする
 2 目標を達成するための解決策(施設・設備の復旧・整備を含む)を考える
 3 解決策を実施するに当たっての懸念事項を洗い出し、解決策をブラッシュアップする
 4 解決策を実行した場合の障害を明確にし、障害を取り除く方法を考える
 5 4を時系列に並べ、計画を作成する。
 
 単なる原状回復を目指すのか、更なる発展(創造的復興)を目指すかはあなたの決断次第です。「なりわい再建支援補助金」に関して手続等不明な点等がございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。
行政書士内藤正雄事務所