小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)の公募要領

 令和6年能登半島地震により被害を受けた小規模事業者等を支援する補助金の公募が開始され、現在4次公募を実施しています。今回は、それについて少し解説したいと思います。
 詳細については、中小企業庁の公募要領を参照してください。また、「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」を含む、被災された事業者の事業継続や雇用維持のための各種支援施策に関する説明会「事業者支援施策説明会」が開催されました。

【活用事例①】
 被災により失った椅子テーブル厨房機器などを新たに購入するとともに、店舗改装と合わせて新しいデザインの看板を作成。リニューアルオープンにより、集客向上をはかった。
【活用事例⑵】
 店舗が入居していた貸しビルが全壊し、自宅の敷地で営業再開。新商品開発のほか、チラシ・フリーペーパーで宣伝を行い、被災前の売上げまでに回復。

1 小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)の概要

 令和6年能登半島地震により被害を受けた被災区域4県(石川県、富山県、福井県、新潟県)の小規模事業者等が行う販路開拓の取組を支援するものです。
 商工会・商工会議所の支援を受けながら、事業の再建に向けた経営計画を事業者自ら作成し、計画に基づいて行う事業再建の取組に対しての経費の一部を補助するものです。

  項  目                           詳  細
補助金額(上限)  直接被害:200万円
⇒自社の事業用資産に損壊等の直接的な被害を受けた事業者
間接被害:100万円
間接的(売上減少)な被害を受けた事業者
補 助 率3分の2
定額(一定の要件を満たす事業者のみ対象※1
対 象 者 小規模事業者のみ(個人事業主も対象)
補助対象経費・使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費※2
証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
①機械装置等の購入※3、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費、⑤旅費、⑥新商品開発費、⑦資料購入費、⑧借料、⑨設備処分費、⑩委託・外注費※4、⑪車両購入費※5
スケジュール 公募開始:令和6年8月19日(月)
5次申請受付:令和6年9月9日(月)~10月7日(月)
対象期間:令和7年1月4日(土)まで
※ 2024年10月4日の経済対策策定に係る総理指示を踏まえ、今後、6次公募を計画
※1 過去5年以内に災害救助法の適用を受けた災害で被害を受けた事業者で要件を満たす場合
※2 今回の特例として、令和6年1月1日の能登半島地震による災害発生以降で、交付決定の前に行われた事業に要する経費についても、適正と認められる場合には補助金の対象となります。
※3 小規模事業者持続化補助金〈一般型〉では認められていない、事務用の机・椅子・ロッカー等も対象
※4 事業再建に資する取組と位置付けられる被災店舗等の解体工事・修理修繕作業も対象
※5 小規模事業者持続化補助金〈一般型〉では認められていない、事業の遂行に不可欠な車両購入費も対象

2 小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)の留意事項

 留意事項は以下のとおり。詳しくは、参考ブログ「補助金とは? 補助金に関する基礎知識」をご参照ください。

⑴よくある誤解

 給付金ではありませんので、審査があり、不採択になる場合があります。また、「後払い」が原則であり、採択決定後に直ぐに支払われるわけではありません(自己負担が必要)。

⑵地域の商工会議所又は商工会の事前の確認が必要

 申請に際しては、地域の商工会議所又は商工会の確認が必要になります。補助金地方事務局への提出の前に、地域の商工会議所又は商工会に「経営計画書」の写しを提出の上、「支援機関確認書」の作成・交付を依頼してください。
 支援機関確認書の発行には、1週間以上、日数を要するため、余裕をもって地域の商工会に作成・交付を依頼してください。

3 補助対象者

 補助対象者は、以下の⑴から⑻に掲げる要件をいずれも満たす日本国内に所在する小規模事業者等です。

⑴上記「被災地域」に所在する、令和6年能登半島地震の被害を受けた事業者であること

①自社の事業用資産に損壊等の直接的な被害を受けた事業
罹災(被災)証明書」など事業所等が罹災したことが分かる公的書類が必要です。
②令和6年能登半島地震に起因して、売上減少の間接的な被害を受けた事業者
令和6年1月及び2月の任意の1カ月の売上高が前年同期と比較して20%以上減少していることが分かる公的書類(セーフティネット4号における「認定書」など)が必要です。

⑵小規模事業者であること

 小規模事業者であるか否かの判断は、以下のとおり、業種ごとに、常時使用する従業員の数で判断されます。
 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業は除く) 5人以下
 サービス業のうち宿泊業・娯楽業     20人以下
 製造業その他              20人以下
〇 業種の考え方
 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業は除く)とは、「他者から仕入れた商品を販売(他社が生産したモノに付加価値をつけることなく、そのまま販売)する事業」、「在庫性・代替性のない価値個人の技能をその場で提供する等流通性のない価値)を提供する事業」を言います。
 製造業とは、「自者で流通性のあるモノを生産する事業、他者が生産したモノに加工を施したりするなどして、更なる価値を付与する事業(在庫性のある商品を製造する事業)」のことを言います。
 その他とは、「商業・サービス業」、「宿泊業・娯楽業」、「製造業」の定義に当てはめることが難しい事業(建設業、運送業等)や区分の異なる複数の事業を営んでいるなど判断が難しい場合を言います。
【例:飲食店】
 調理技能を用いて生産した料理をその場で提供するのみであれば「商業・サービス業」ですが、調理技能を用いて流通性のある弁当、総菜、お土産を作っていれば「製造業」に該当します。
【例:本屋】
 出版社・取次から仕入れた書籍をそのまま販売するのみであれば「商業・サービス業」ですが、自社の知覚とノウハウをもとに、小説と小説内に登場する料理を提供する飲食店を掲載した案内雑誌を「文字と舌で楽しみたいグルメセット」等として販売していれば「製造業(他社が生産したモノに新たな価値を付与している)」に該当します。
〇 補助対象者の範囲
 補助対象者となりうる者は、以下のとおり。
 ・会社および会社に準ずる営利法人
 ・個人事業主
 ・一定の要件を満たした特定非営利活動法人
 以下の者は、補助対象者にはなりません
 ・医師・歯科医師・助産婦
 ・系統出荷による収入のみである個人農業者(個人の林業・水産業者についても同様)
 ・協同組合等の組合(企業組合・協業組合を除く)
 ・一般社団法人、公益社団法人
 ・一般財団法人、公益財団法人
 ・医療法人
 ・宗教法人
 ・学校法人
 ・農事組合法人
 ・社会福祉法人
 ・令和6年能登半島地震の発生時点において事業を行っていない創業予定者
 ・任意団体

⑶本事業の応募の前提として、早期の事業再建に向けた計画を策定していること

 「計画」は、事前に商工会議所・商工会の確認を受ける必要があります。
 計画書の作成に当たっては、商工会議所・商工会と相談し、助言・支援を得ながら進めることができます。

⑷資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと

⑸確定している(申告済み)の直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと

⑹商工会議所又は商工会の管轄区域内で事業を営んでいること※

※ 会員・非会員を問わず、応募可能です。

⑺小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)の補助金交付を受ける者として不適当な者(暴力団等)のいずれにも該当しない者

⑻小規模事業者持続化補助金〈一般型〉等の事業において、採択を受けて、補助事業を実施した場合、各事業の交付規程で定める「小規模事業者持続化補助金に係る事業効果及び賃金引上げ等状況報告書」を原則本補助金の申請までに受領された者であること

4 事前準備から事業終了までの流れ

⑴事前準備

商工会議所・商工会への相談
証明書類(罹災(被災)証明書等)の発行
事業計画の作成

⑵公募開始から交付候補者決定(4次公募の場合)

公募受付開始(令和6年9月9日)
公募締切(令和6年10月7日
事業計画審査
採択者決定

⑶交付決定から補助事業実施

交付申請・決定
補助事業開始
事業実施(令和7年1月4日まで)
実績報告
確定検査
補助額の確定
補助金の申請
補助金の支払い

5 成果に繋がる事業計画の作成

 審査において、3⑴から⑻の要件を満たさない場合は、失格となります。また、計画について、以下の項目に基づき加点審査を行い、総合的な評価の高いものから順に採択されます。
 ①事業再建に向けた取組として適切な取組であるか
 ②令和6年能登半島地震による被害の程度
 ③その他、自社分析の妥当性計画の有効性積算の透明・適正性
 事業計画の作成は、一番大切なところであり、自社の問題(現状と目標のギャップ)を正確に定義した上で、問題を解決できるように(成果が出るように)事業計画を立てることが重要です。(参考ブログ:「問いの力」とは?)
 補助金は目標を達成するための手段であって、目的ではありません。補助金は無事採択され、計画通りに進捗しているけど、期待した成果(利益増)には繋がっていないということでは意味がありません。また、本補助事業の趣旨は、被災小規模事業者が被災からの事業の再建に向けた計画を自ら作成し、計画に基づいて行う事業再建に向けた取組を支援するものです。したがって、外部のアドバイスを受けるとしても、自らの意思を計画に反映するプロセスが重要です。事業計画の作成といっても色々なやり方がありますが、以下の手順でファシリテートすることで、事業者の意思を計画に落とし込むことが可能となります。
 1 目標(ザ・ゴール)を明確にする
 2 目標を達成するための解決策を考える
 3 解決策を実施するに当たっての懸念事項を洗い出し解決策をブラッシュアップする
 4 解決策を実行した場合の障害を明確にし、障害を取り除く方法を考える
 5 4を時系列に並べ、計画を作成する

 「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」に関して疑問点等がございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。
行政書士内藤正雄事務所