1 相続分 どんな割合で相続を受けられる?
相続分とは、複数の相続人がいる場合、各相続人が遺産を承継する割合をいい、指定相続分と法定相続分があります。
⑴ 指定相続分(民法902条)
相続分の指定は遺言によってのみすることができます。すなわち、指定相続分は、被相続人の遺言により、各相続人に指定された相続分であり、民法で定められた法定相続分より優先されます。
⑵ 法定相続分(民法900、901条)
相続分の指定がない場合、各相続人の相続分は、民法で定められた法定相続分によることになります。法定相続人の相続割合は、以下のとおりです。なお、代襲相続の場合の相続分は相続人と同じです。
・相続人が配偶者のみの場合
配偶者がすべてを相続します。
・相続人が配偶者と子の場合
配偶者と子が2分の1ずつ相続し、子が複数いるときは2分の1をさらに子の人数で等分します。例えば、子が3人いると、2分の1を3等分で、それぞれ6分の1ずつとなります。
・相続人が配偶者と被相続人の親(直系尊属)の場合
配偶者が3分の2、親が3分の1相続し、両親が健在の場合、3分の1をさらに等分するので、それぞれ6分の1ずつとなります。
・相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合
配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1相続し、兄弟姉妹が複数のときは4分の1をさらに等分するので、兄弟が2人いれば、それぞれ8分の1ずつとなります。
・配偶者がいない場合
順位の高い相続人で、均等配分します。例えば、子が3人いるときは3分の1ずつとなります。
2 相続の承認と放棄 相続しなければならないのか?
相続の効果は、被相続人の死亡により当然のように生じます(民法896条)。しかし、相続人は、被相続人の財産を相続するかしないかを選ぶことができます。ただし、相続の開始があったことを知った時(自分が相続人になったことを知ったとき)から3カ月以内に決める必要があり、決めないと承認(単純承認)したことになる(民法915条1項)ので、注意が必要です。
なお、相続の承認・放棄は、相続開始後に限られ、相続開始前に承認・放棄しても無効となります。
⑴ 単純承認(民法920、915条)
被相続人の財産(資産および負債)や権利義務をすべて承認することをいい、民法では単純承認が原則です。相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に、限定承認や相続放棄をしなかった場合には、単純承認したものとみなされ、プラスの財産だけでなく負債についても無限責任を有することになります。
なお、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、保存行為などを除いて、相続人は単純承認したとみなされます(民法921条)。
⑵ 限定承認(民法922から924、915条)
被相続人の資産(プラスの財産)の範囲内で、負債(マイナスの財産)を承継(弁済)し、相続人の固有財産(もともとの財産)による責任を負わないことをいいます。限定承認をする場合は、相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続人全員が合意して家庭裁判所に申述という手続きをする必要があります(一人でも反対する人がいれば、限定承認はできません)。例えば、負債が5千万円で、プラスの財産が3千万円だったときは、差し引いた負債2千万円は相続しなくても良くなります。
⑶ 相続放棄(民法938から939、915条)
被相続人の財産(資産および負債)をすべて承継しないで、初めから相続人とならなかったものとみなされることをいいます。相続放棄する場合は、相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に、家庭裁判所に申述という手続きをする必要があります。この場合、限定承認と違い、相続人全員が合意して行う必要はありません。
⑷ 承認・放棄の熟慮期間の伸長(915条)
限定承認と相続放棄は、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所で申述という手続きをする必要がありますが、もし、それまでに故人の財産状況を調べきれないときは、相続の承認・放棄の熟慮期間の伸長の申立てを行い、期間を延長してもらうことができます。
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